初心者必見:企業ブランディング成功事例【後編】

この記事でわかること

  • 企業ブランディングの成功事例
  • 企業がブランディングに成功するためのポイント

1.企業ブランディングで成功した事例を紹介

成功イメージが掴めないとブランディングを考えることもできません。企業ブランディングで成功した企業12選を紹介します。ぜひ、この事例を読んでブランディングのイメージを掴みつつ、自社のブランディングに活かしていくようにしてください。

・ユニクロ

ベーシックな定番ファッションに力をいれているのがユニクロの特徴です。シンプルだからこそ老若男女問わず受け入れられ、年々商品の改良や機能性の向上に務めています。

シンプルだからこそ大量生産もでき、コスト削減にも繋がり、ファミリー層からも確かな信頼を得ています。シンプルで機能的なファッションを展開しているブランド=ユニクロのイメージが定着しているといっても過言ではありません。他のブランドとのコラボ商品も多く、飽きずに買い続けやすいのもユニクロの魅力です。

ユニクロは “ブランドアイデンティティ”の明確化を重点的にブランディングしています。具体的には「共感価値」「感性価値」「実利価値」のことをいい、自社の良さを自分たちでアピールしなければ伝わらないと考えました。ブランドアイデンティティを明確にして、コミュニケーションを積極的に取り入れたブランディングを行いました。

例えば、ユニクロのコンセプトといえばLifeWear(究極の普段着)です。公式サイトによるとLifeWearは、あらゆる人の生活をより豊かにするための服であり、美意識ある合理性やシンプルで上質、細部への工夫に満ちているのも特徴です。服を着るお客様の視点に立って、提供する服とは何かを伝えるための言葉です。

世界で唯一、日本初のLifeWearとして、あらゆる人が良いカジュアルを着られるように、新しい日本の企業でありたいという思いを込めています。ユニクロが常に考え続けてきた理念を結実させたものでもあるのです。

ファーストリテイリング社は、日本ならではの独自の価値観を活かし、世界に打って出たいと考えたそうです。実質的な価値観を求めるように変化したことも、支持の拡大へと繋がり、グローバルブランドとしての確かな地位を獲得するまでになりました。

・Google

ソフトウェアの分野で確かな地位を獲得しているのがGoogleです。IT分野を先導する情報企業としてアイデンティティでもある情報でCSR活動を展開し、ほぼ全世界をカバーするほどの役立つシステムを構築しています。

シンプルで直感的なデザインを取り入れ、常に新しいアイディアを世に送り出しているのもGoogleならではです。ユーザーからも高い評価や信頼、ソフトウェアといえばGoogleという忠誠心を得ることにも成功しています。

Googleは、コアチームだけでなくさまざまな専門部署のチームを20以上立ち上げ、エンジニアリングやプロダクト営業、デザインなどの専門性を活かした取り組みを行いました。

プロジェクトの方針がぶれないように、インサイトをフィードバックしつつ、多くのチームが関わることで新しいアイディアが生まれていきました。

Googleは、広告主の要望に対してより迅速に応えたいという思いを持っていました。この20年間でインターネット業界は大きく変貌をとげています。ツール類は進化しているものの、Googleのイメージが検索広告の購入になってしまい、関心の高い層へのリーチに繋がらない問題がありました。広告主の立場になって考えることの重要性を追求し、チーム一丸となって目的を達成させました。

Googleは、さまざまなサービスを提供していますがシームレスに利用できる単一のプラットフォームとして統合したいと考えました。少人数のマーケティングスペシャリストのコアチームを立ち上げ、さらにさまざまな部署のスタッフからチームを20以上立ち上げました。

専門性に特化した作業を行い、エンジニアはコードベースに100万カ所以上の変更、数百本のYouTube動画の編集、ヘルプセンターの記事5,000以上を更新しています。多くのチームの関わりによってアイディアを生み出し変更を加えていきました。

グローバル化を進めるために、ブランド名を現地の言葉にローカライズさせ広告の利便性も高めています。チームが一丸となったころで、ブランド再構築プロジェクトを成功させたのです。

・スターバックス

アメリカのシアトルに本社を構え、世界的にも有名なコーヒーショップブランドです。スターバックスは、CMや広告を一切出さずに実際に足を運んだ利用者による「店舗体験」をベースにしています。

ホテルラウンジのようなおしゃれなソファに、BGMによる心地よい空間づくりはもちろん、コーヒーの香りが漂い細かいオーダーにも応じてくれます。スターバックスは「最高のコーヒーをバリスタを通じて顧客に提供することによって、最高の体験をしてもらう」ことを創業当時からビジネスの根幹として考えています。そのためには主義・信念において決して妥協することなく成長することも大切だとしています。

やや高い価格帯でもファンが途切れることなく高いリピーター率を誇ります。

スターバックスは自分たちの提供している空間を「サードプレイス」と呼んでいます。家でも職場でもない第三の居場所を提供することで“スタバブランド”そのものを作っています。スターバックスは、従業員の教育にも重きを置きつつ、接客も含めた居心地の良い空間やカスタマイズされたコーヒーを楽しめる顧客体験を大切にして欲しいと考えました。

店内の内装はもちろん、接客は顧客体験に大きく繋がると考えコミュニケーションを大切にした温かみのあるサービスを提供しています。店内の清潔さはもちろん、商品知識を高め、顧客にあった対応を行うことを大切にしています。また社員満足度を高めるために、福利厚生を充実させたり、キャリアアップの支援を充実させたのも特徴です。人材を大切にし、個々の社員の能力を発揮できるような環境づくりも、会社の成長に繋がっています。

・星野リゾート

星野リゾートは、開業100年以上の歴史を誇る日本の総合リゾート企業です。5つのサブブランドを作り、さまざまな顧客のニーズに対応しています。それぞれの施設をブランド化することでどのような施設があるのかを明確にしつつ、自分にあったホテルを選択できます。

例えば「星のや」は、圧倒的な非日常空間を演出しつつ、ラグジュアリーな和の滞在空間を意識しています。「界」は地域の魅力を再発見し、心地の良い和にこだわった上質な温泉旅館としても知られています。「リゾナーレ」は、「PLAY HARD」をコンセプトとしその土地の自然を活かした非日常の空間のなかで、夢中になって楽しみ尽くせる滞在を提供しています。リゾナーレのなかには、森のアスレチック・農業体験・スキー・乗馬など、大人はもちろん子供も楽しめるファミリー向けのアクティビティが充実し、洗練されたデザインで作られたリゾートホテルです。

星野リゾートのコンセプトは、経営層が決めるのではなく、現場の従業員が主体性を持って決めることを重要視しています。従業員がコンセプトに共感すれば、実現しようと理想に近づこうとするモチベーションが高まると考えたのです。まずは、従業員の立場だからこそ見える、必要なサービスや不要なサービスを明確にしていきました。その後、無駄なサービスを増やさずにコストを省くことに成功しています。

グループ全体でのリピーターを増やすことに力をいれているのも特徴です。SNSを積極的に使って若者の顧客を獲得することで早い段階で星野リゾートのファンを獲得しています。また、スタッフ全員が女将さんになるマルチタスクを採用しています。

星野リゾートは、広告投資による一時的な利益を重視していません。ブランドのイメージ向上や顧客満足度など長期的な視点で企業としての価値を追求することに成功しました。インバウンド客だけでなく国内の観光客も大切にしつつ、顧客サービスの期待値が高い日本人をメインターゲットとしています。宿泊客からのアンケートやフィードバックも積極的にとりいれ改善を行い成功しました。

・Apple

Appleといえばリンゴのブランドロゴをイメージする人が多いと思います。革新的で洗練されたイメージを抱かせるブランディングに成功しています。新しい技術を次々に開発し、質の高い製品づくりを行うことでリピーターが多いのも特徴です。

Appleのプロモーションでは、ストーリー仕立てで魅力を伝えており実際に製品を使うとどんな効果が得られるのかを、うまく伝えられています。スティーブジョブズ氏が自身の役割だと理解していた、Keeper of the Vision(ビジョンを持ち続けるもの)にあるように、独自のストーリー性を重視しています。”Think different”キャンペーンでは、1997年のCMでアインシュタインなどの偉人を起用し「世界は変えられる」とメッセージを流し、話題となりました。また、Appleのロゴは、シンプルなデザインだからこそ飽きがくることなく、幅広い世代が愛用しているブランドと言えるでしょう。

・ジョンソンエンドジョンソン

医療機器や医薬品メーカーとして知られている、ジョンソンエンドジョンソンは事業展開の広さでも知られています。シンプルに描いた企業ロゴは長年愛され続けている証拠です。ブランドミッションとして「我が信条(Our Credo)」があり、顧客の安全を第一に考えています。老舗ブランドならではの確かな安心感と公正さ、誠実さを守り続けています。一貫性のあるブランド戦略を行い認知度やイメージの向上に繋げています。

1982年に異物混入事件が起きたことが、ジョンソンエンドジョンソンのブランディングの転機となりました。頭痛薬に毒物が混入し7人もの死者を出してしまいます。社会的な責任を果たすために、1億ドル(推定)をかけて頭痛薬の自主回収や徹底的な情報公開を行いました。多くの犠牲者を出していることもあり会社への信頼の低下や、厳しい批判もありました。ジョンソンエンドジョンソンは、費用をかけることを惜しむころなく、社会的な責任を果たすための行動を行ったことで世界的に評価される企業となりました。

ヘルスケアとして責任が大きな業界のなかで、商品やサービスを利用する顧客や、会社で従事している全社員、地域社会などの共同社会、会社の株主それぞれの人に幸福が訪れるように尽力したブランディングを行っています。

・アサヒビール

日本のビールメーカーのなかでも、最も成功したブランドとして知られています。離職率の低い企業としても知られているのは、インナーブランディングに力をいれているためです。

自社の社員が働いている会社に誇りを持てるように、全国にある量販業務に携わる支店長を対象に価値が伝わる営業の意識改革にも力をいれています。コミュニケーションの機会を増やしていることもあり、アサヒビールが持っているビジョンや価値観を共有し、社員のモチベーションを高めるブランディングを大切にし続けています。

アサヒビールのコンセプトは「すべてのお客さまに、最高の明日を」です。ビールの美味しさだけではなく、すべてのお客様にとって幸せな人生に貢献したいという思いを込めています。日本だけでなく世界をより良いものにしていきたいとつけられたものです。2026年にビール類酒税一本化に向けたビール減税が予定されており、今後市場は拡大すると考えられています。スーパードライとアサヒ生ビールの2つのブランドを主力にしつつ、期待を超える美味しさや、新しい生活文化の創造を実現するために取り組んでいます。

・とらや

江戸時代から続く和菓子の老舗として、断固たる地位を獲得しているのがとらやです。ブランドロゴに入っている「虎」の文字も国内だけでなく海外でも高い評価を得ています。若い世代には和菓子人気が低迷していましたが、とらやの持っている和菓子本来の魅力を伝えつつ、洋菓子風のアレンジも取り入れたことで、より多くの人から認知されるブランドになりました。

とらや会長の17代・黒川光博氏によると虎屋はすべて「コアビジネス」であると話しています。コアがきちんとしていると、新しいことをはじめてもお客様には受け入れていただけるとし、会社が大切にしているコアの部分をどれだけきちんと貫けるかが勝負としています。コアとは”本当に美味しいものを誠実につくること、一生懸命に和菓子を極めることです”としています。時代の変化によって、それ以外に変えてはいけないことはないとして、美味しい和菓子を召し上がっていただきたい想いを大切にしています。

和菓子の販売だけでなく虎やカフェも展開し海外に出展しています。2003年にカフェ事業に参入することになり、当時は和菓子の製造販売以外として議論の上で決まったものです。

当時のプロジェクトリーダーは25歳の女性であり、あえてベテラン社員ではなく柔軟な考えをもって判断を下す姿勢や、伝統に埋もれることなく新しいことに挑戦する姿勢を重視したといいます。一番熱意を持った人物に任せたのも、とらやのブランディングです。時代に流されることなく虎やとしての価値を守り続けているのも特徴です。

・今治タオル

愛知県の今治市で生産された品質重視の高級ブランドタオルです。贈り物としても選ばれることが多く、触り心地の良さでも定評があります。

かつては産地消滅の危機においこまれていた時代があります。安価な外国製品に押され気味になり瀕死状態だった今治のタオルの再生プロジェクトが行われるようになりました。食の安全などが問題になっていた時代に、日本製品の注目が集まっている今こそ必要性を感じたそうです。一貫した取り組みやブランディングプロジェクトを行い誰もが知っているブランドとして成長しました。

今治タオルのブランドロゴは、温暖な気候やきれいな水が質のいいタオルをつくるのに適していることから、ブランディングとして象徴するようなロゴづくりにこだわったそうです。すべての商品に今治のロゴをつけるのではなく、品質基準をクリアしたタオルだけにつけるなど、運用ルールを徹底し、ブランド価値を守っています。

・USJ

USJは企業ブランディングを重要なものと位置づけ、社会的な価値に共感させることとしています。企業としての社会的価値を明確にしたことや、コミュニケーション、パーク内での体験やプロダクトにおいて社会的価値を徹底的に実現してきました。消費者に共感してもらうことを大切にしており、2020年より「NO LIMIT!」をコンセプトに掲げています。NO LIMIT!は、USJが顧客に思いきり楽しんで欲しいという思いを込めて作ったものです。

社内のコミュニケーション施策にも積極的に取り組み、自分の役割やポジションを超えて取り組んだ社員を表彰する制度を導入しています。

USJは、ターゲットを大幅に広げて成功した企業です。事業立て直しのために100以上の施策があったなかで、大きな鍵を握った部分でもあります。以前は「映画ファン」をターゲットにしていたため、規模が求めている顧客数を得ることができませんでした。USJは、低年齢の子ども連れファミリーや関東圏・海外の顧客も惹きつける施策を行い成功しました。なかでも、圧倒的な集客力を誇るハリーポッターに巨額の予算を投じたのもその理由です。

2024年にコンセプトを「LOVE HAS NO LIMIT(ラブ・ハズ・ノーリミット)」にリニューアルし、新しいプロジェクトにも取り組んでいます。エンターテインメントの常識を超えて人々や社会全体が未来に向けて前進することを後押しする“目覚め”を提供しています。コンセプトを広げる取り組みとして、スペシャル感謝月間を作ったり、チャリティTシャツの制作やチャリティディナーショーも計画しています。

・マツダ

創業100年以上を超える自動車メーカーです。マツダの世界シェアが2%だった頃、既存の2%のファンに強く共感してもらえるようなブランド作りに取り組みました。5万人の熱狂的なファンに綿密なヒアリングを行い、マツダに対する思いを新型車である「アテンザ」に詰め込み主力製品を作り出したといいます。

もともと東洋工業として広島で創業し「数字は力」になる時代だったため、販売規模の拡大を経営の最優先の目標として、品ぞろえ重視となり、競争力のある力強い商品を作れずにいたそうです。フォード社との資本提携が行われ、マツダの大切なメッセージ「Zoom-Zoom」が生まれています。これは、子どもがミニカーを動かすときに使う言葉の「ブーブー」を元にしたものです。子どもの頃に感じた動くものへの感動や心ときめく体験を提供するというブランドメッセージをもとにしています。

技術開発の長期ビジョンを描き、従来のモノづくりではなくすべてを一新する活動をスタートさせました。「理想的な車をゼロから見直す」ことにし、徹底的に理想を追求しました。10年後の先を見据えた経営を続けたことで、今のマツダに繋がっています。

・ヤンマー

ヤンマーは創業100年を超えた2012年に大規模なリブランディングを行い、コーポレートアイデンティティだけでなく商品のブランディングまで一貫した改革を実施し、話題になりました。創業時より持っていた「多くの人が憧れるような職業となるよう、農業のイメージアップに寄与したい」という活動を活性化するために、ブランドデザインを変えています。

ヤンマーは開業当時より「HANASAKA(ハナサカ)」をコンセプトにして、世界に今までにない驚きや感動を生み、次の世代を育てることを大切にしています。未知の可能性を応援しつつ、未来をワクワクできるものに変えていく。人と未来を育む出発点として考えています。一番大切なのが「人」であると考え、従業員も大切にしています。「花は咲くのではなく、咲かせるものである」という創業者の思いをもとに次世代に繋いでいます。東京駅の近くにビルを作り、ワークショップを実施。オリジナルアニメの制作も行いヤンマーのブランディング活動を幅広く行っているのも特徴と言えるでしょう。

ブランドの統一化を図ることを大きな課題として、2012年よりプレミアムブランドプロジェクトを実施しました。外部デザイナーなどのさまざまな人が関わったこともあり、大きな反響を呼びました。「ミッションステートメント」で社会的使命を表したものなど、ヤンマーらしさにこだわりました。


2.ブランディング成功するためのポイント

企業がブランディングに成功するために、覚えておきたいポイントを紹介します。

・一貫性をもって伝えること

ブランディングを成功させるためには、コンシステンシー(一貫性)を確保できるかどうかが重要です。社員に浸透させることはもちろん、商品やデザイン、顧客とのコミュニケーションやプロモーション活動に一貫性をもたせるようにするのも成功させるポイントです。

・達成したいコンセプトを設計すること

ブランディングはまずはその目的を明確にし、何を達成したいのか、伝えたいのかをはっきりとさせていきます。目的は、ブランディング活動全体を指導するための道しるべとなります。初期の目的設定は十分な時間をかけて行うようにしてください。

・組織が一丸となりブランド意識を高めること

企業ブランディングを行うためには、社内のブランド意識を高める必要も出てきます。コンセプトに対して社員がブランドイメージに共感し実践することも大切です。社内でブランド意識を高めることで一貫したブランドイメージを保つことにも繋がります。

・時代に沿って知識向上やスキルアップを目指すこと

時代にあったアップデートを行うことも重要です。ニーズは常に変化していますし、アップデートするためにも新しい知識やスキルを学ぶことも大切です。AIやデジタルツールなど、新しいテクノロジーを使ったマーケティング戦略に繋げていきましょう。


3.まとめ

企業にとってブランディングは、差別化が難しい市場で生き残り、成功するためにも重要です。ブランディングは企業にとっても大きなメリットが期待できるからこそ、ポイントを押さえた施策を行うようにしてください。企業ブランディングで成功した事例を参考にしつつ、自社にあった施策に挑戦していきましょう。