企業のためのブランディング基礎知識【前編】

ブランディングとマーケティングの違いがわからない人もいるのではないでしょうか。本によってもそれぞれの定義が異なるため、戸惑ってしまう人もいると思います。

現代戦略においても重要な部分になるからこそ、それぞれの違いについて把握しておくことが大切です。また、ブランディングを行うために、実践的なアプローチ方法やツールについても、説明していきます。

ブランディングとマーケティングそれぞれの特徴を理解しましょう。

この記事でわかること

  • インナーブランディングとアウターブランディングについて
  • ブランディング・リブランディング・マーケティングの違いについて
  • ブランディングを取り入れるべき理由

1. ブランディングとは?

ブランディングとは、商品やサービスが他の競合とは違うものとして広く認識され価値を認められるために行う取り組みのことをいいます。

ブランディングは対象によっても2つに分類されるといわれており「アウターブランディング」と「インナーブランディング」があります。

それぞれの違いについて、まずは説明します。

・アウターブランディング

消費者や取引先を対象に、社外に対して行うブランディングのことをいいます。一般的なブランディングといえば、アウターブランディングのことを指します。

弊社の場合のブランディングとは、商品やサービス、ブランドについての情報発信にとどまらず、ブランドの企業活動そのものがブランディングの領域としてとらえています。具体的には、ブランドのコンセプトを一気通貫して商品の味、デザイン、店舗、WEB、サービス、接客、SNS、プロモーションといった全てのタッチポイントで”ブランドらしさ”を表現しています。

そういった活動を通して認知度を拡大し、自社のブランドに共感してもらい新規顧客の購入やリピーターを増やしていきます。アウターブランディングによって、消費されるコンテンツではなく、長く愛されるブランドとなり、事業としても長期的な成長を見込むこともできます。

(例)サントリーBOSS

サントリーの缶コーヒーBOSSは25周年を迎えた2017年に「CRAFT BOSS(クラフトボス)」を販売しました。コンセプトは「WORK&PEACE」とし、働く人を快適にする新しい相棒として多様な楽しみ方ができるように考えられたものです。2013年よりコンビニで本格的なコーヒーが飲めるようになり、2015年にはこだわりの豆や焙煎などが特長のブルーボトルコーヒーのブームがやってきました。新しい市場のなかで「爽快感」を求めたコーヒー需要があるのを知り、缶に対しての拒否感を減らすために、プラスチック容器を使うことを考えます。当時は、ペットボトルのブラックコーヒーは売れないという暗黙の了解が業界に浸透していました。その常識をかえる大きな挑戦をしたものがペットボトルコーヒーでもあるのです。

オフィスワーカーの人でも飲みやすいように、ペットボトル式でゆっくり時間をかけて飲むことができ、澄みわたるコクがある本格的なコーヒーとして話題になりました。ネット配信やプロモーションを行い、新規顧客だけでなく既存客にも効果的にアプローチして大ヒットを記録。働く人の相棒的な存在として新しい市場を開拓しています。

・インナーブランディング

インナーブランディングは、社内に対して行うブランディングのことです。企業価値はもちろん、企業理念を共有できるようにするのが目的です。社員が自社に対してのロイヤリティを高めて、モチベーションを維持する工夫をしています。離職率を抑えて、優秀な人材を確保することや、企業として利益率を高めることにも繋がります。

例えば、創業年数が増え事業領域が広がった会社の場合、会社の理念と実際のサービス部分が一致しなくなってしまうことがあります。会社の役職など関係なく社員がプロジェクトチームを形成し、今までの会社としての歩みを振り返り、未来を創るためのチームビルドを実施し、ミッション・ビジョン・バリューの策定などに活かしています。

(例)東京ディズニーリゾート

インナーブランディングで最も成功している東京ディズニーリゾートは、働くキャストに「ゲストのハピネスを創造する」といった共通した価値観を育ませて、一人ひとりの自発的な行動によって素晴らしい顧客体験へと繋げています。ディズニーは約80%がアルバイト雇用でありながら「ディズニー・ユニバーシティ・プログラム」という座学を行い、哲学を学ぶ機会を設けています。テーマパークを最高の場所にするための守るべき行動基準を決めています。


2. ブランディングと他の用語との違い

ブランディングについて、よく混同されやすいのがリブランディングやマーケティングです。それぞれの違いがよくわからないと思っている人もいるのではないでしょうか。

ブランディングとの違いについて、それぞれ詳しく見ていくようにしましょう。

・ブランディングとリブランディングの違い

リブランディングとブランディングは、ブランドのイメージを構築する目的は同じです。

ただし、実施するタイミングに大きな違いがあります。具体的には、ブランディングとは、ゼロからブランドを立ち上げるときに、開発そのものから世の中に波及するまでのブランド活動そのものを”ブランディング領域”としています。

リブランディングは、消費者ニーズはもちろん市場動向の変化などを要因に、ブランドのイメージを変えるべきだと判断したときに行うものです。ブランドの方向性が変わったときや、経営者が変わったときに、リブランディングを行い節目の変化としています。

リブランディングは、時代の変化に対応できることや、新規顧客の獲得にも繋がります。

(例)サンリオピューロランド

もともとはサンリオなどのキャラクターを中心にした遊園地として知られていました。サンリオといえば、ハローキティのイメージが強くなってしまい頼りきってしまっていたため、人気度の低いキャラクターを自社製品に繋げられない課題がありました。

サンリオの大半はライセンスによるロイヤリティになるため、マーケティングがうまくできていないと揺れ幅が大きくビジネスに直撃してしまう問題があったそうです。

そこで、人気キャラクター以外も、中長期的なマーケティングを考えた施策を行うようにビジネスモデルを変えていきました。ハローキティに売上を依存するのではなく、安定的な売上が作れるように、サンリオピューロランドのアトラクションやイベント、キャラクターグッズなどの幅を広げていきました。

その後、新しいアトラクションやイベントを増やすことで”クリエイティブエンターテイメント施設”へと転換することに成功し、幅広い世代の来場者を呼び込むことができました。入場者も増え、確かな地位を獲得するまでに成長しています。

・ブランディングとマーケティングは関わり合っている

マーケティングは、商品を売るための総合的な戦略のことをいいます。

具体的には消費者のニーズを深堀していき、商品化されていないモノに対して、市場を捉え売れる商品作りに繋げていきます。商品のコンセプトを決め、商品やサービスの立案、価格設定、整備などの企画を行うことを特徴としています。

ブランディングは、商品や企業の独自の価値を構築し、差別化をすることで第一想起してもらえることを目的にしています。現在のマーケティングは短期的な市場ニーズばかりを優先してしまい、ブランドのイメージとマーケティング施策が剥離している部分も少なくありません。ブランドのビジョンやコンセプトも重要だからこそ、市場のニーズも意識しつつ、お互いに関わり合いながら企業のブランドを成長させる必要があります。一見異なるように見えるブランディングとマーケティングもお互いに関わり合う部分がある施策といえるでしょう。


3. ブランディングを取り入れるべき理由

ブランディングは、企業にとって商品やサービスを提供する根本となるものです。そのため、企業価値そのものに影響するといっても過言ではありません。企業にとってブランドに対しての好感度を高め、愛着を持たせることにも繋がります。

・ブランドの信頼感を高められる(競合との差別化・顧客獲得)

ブランディングは、信頼感を高め競合他社との差別化にも使えます。商品やサービスについて深く理解してもらうのはもちろん、他社にはない魅力に気付いてもらえるようになります。顧客との間で構築された信用でもあり、安心感を与え顧客獲得に繋げることもできます。自社を選んでもらいやすくなるための売り場などの環境作りも、ブランディングのポイントです。

・企業や製品に付加価値を与えられる

ブランディングを通して、企業は付加価値をアピールできます。企業そのものや商品、サービスに対して独自性のある価値を、いかに提供できるかが重要になってきます。

ブランディングの本来の目的は、ターゲットに選ばれることでもあります。価格競争から脱却して自社の強みを顧客と繋げるために、付加価値はブランディングにとっても大切なことといえるでしょう。

・ファンやリピーターを獲得できる

ブランディングは、顧客が企業に対しての認知度を高めることにも繋がります。企業としての認知度を高められれば、商品やサービスを購入するときに思い出してもらいやすくなり、事業展開を有利に進めることにも繋がります。

今は商品やサービスで溢れているなかで、知らない商品を購入することに抵抗感を持つ人も少なくありません。いかに購入を促すかを考えたときにブランディングを行い認知度を高めていくことが大切です。

・企業活動が注目される

ブランドの認知度を高めることで、企業活動への注目度を高めることにもなります。より多くの消費者に見てもらえるようになると、宣伝の効果も出やすくなりますし、販促にも繋げやすくなります。

また、投資家の目を集めることにもなるので、新しく事業を展開したいときの資金調達の効果も期待できます。企業側によっても、効果的に注目度を高められるのもポイントといえるでしょう。

続きは後編で「ブランディングを効果的に行うポイント」、「ブランディングとマーケティングは両方行うべきか」、そして「ブランディングに成功した企業の紹介」をご紹介させて頂きます。

後編をお楽しみに!